ベンチに座っている年配の男性と会話して驚いた。太平洋戦争の激戦地であり戦局のターニングポイントとして名高いガダルカナル島からの86歳の帰還兵だった。米軍に囲まれている中を脱出した話は小説や映画などで、あまりにも有名だが、まさに生き残りの一人であるわけだ。そして内地へ帰還後は広島の原爆を体験した歴史の生き証人であった。私は、男性を乗せたバスが見えなくなるまで、敬意を込めて見送った。こんな出会いもバス停の取材を続けているからこそだ。
この連載の原稿には全くもって触れていないが、右側に位置するルーズソックスの高校生も、気になりますよね。そして今となっては絶滅してしまいました。当時既にピークは過ぎた感がありましたが、まだまだいる時期でした。
僕は会釈して、こちらの存在をアピールしつつこの男性と会話しながら、彼女の配置や、表情を伺いながら、撮影しました。
この男性は、もっと若い時期は、神奈川県の公立学校で、戦争体験の語り部をやっていたそうで、連絡先を教えてもらい、かつ聴きに行く約束をしたので、約半年後にお伺いしました。詳細は忘れました。覚えていることは、ガダルカナルでは、負傷して、前線から後方に戻ったこと。そして壮絶な被爆体験を語ってくれました。2010年の僕の著作の写真集の出版の際に電話したら91歳ご健在で、本をプレゼントしました。この時は電話と郵送で対応しました。
今回は、バスマガジンの連載にするつもりで訪問して撮影して、鬼籍に入ったことを知りました。ご冥福を祈るとともに、現在ウクライナでの戦争のことを知ったら、悲しむだろうと、思った次第です。
バスマガジンの記事は、こちらから、お読みください。2019年9月号(Vol.97)でした。
余談だが、今回の再訪で、たまたま入った日本そばやが、うまいうえに、店内で、まるで町の観光案内書のように、様々な案内があって、興味深かったです。戦国時代の北条氏と武田信玄が戦った古戦場である三増峠があることを知って、観光しました。楽しい旅になりました。もちろん、彼のご冥福を祈りながら!